昔の話だ。
 小学校の高学年だった頃(だと記憶している)、親と一緒に少し離れた(電車で1時間くらい)友人の家に遊びに行った。で、その家の子(♂)とファミコンなどして遊んでいたのだが、健康的でない、ということで外に遊びに行かされた(強制)。親の言うことに逆らえるわけも無く、仕方なく近所の公園に遊びに行った。
 その時、何を思ったのか、二人でその公園にあった砂場を掘り返そうということになった。特に意味があって始めたわけではなかったと思う。その公園にはたいして遊具も無く、また、自分たち以外に遊んでいる人間もいなかったからとか、まぁ、そんな程度ではなかったのだろうか。とにかく、その辺に落ちていたプラスチックのスコップやら、木の棒やらでがりがりと砂場を掘り返していた。
 砂場の片隅をしばらく掘ると、コンクリートの底面が見えてきた。そこまで深い穴ではなかったと思う。きっと20センチ程度だったのだろう。小学生二人が掘れた穴だ。それほど深い穴ではなかったに違いない。ともかく、砂場の底が見えた。そしてその穴を少しずつ広げていった。すると不思議なことに、平面であるはずのコンクリートが無い場所があった。そこを少し掘ると、すぐにコンクリートに行き当たった。その空間は、長方形をしていた。その先をさらに掘ると、また掘れる場所があった。砂をかき出すと、やはり長方形をしていた。掘り進めて行くうちに、私たちは理解した。
 これは、階段だ。
 掘り出せたのは3段程だったが、その規則的な形は階段以外のものには見えなかった。また、その階段が続く方向はまだ掘れるようで、まだ深い場所にその階段の続きが埋まっている事を予想させた。
 その後、私たちは階段を埋め戻して家に帰った。もしかすると、子供心に不気味だと感じたのかもしれない。戻っても、親にその階段の事は言わなかった。
 今になって、ふと思う。
 あの階段は、どこに続いていたのだろう、と。