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どうでもいい話。
こんな記事(http://www.daily.co.jp/gossip/2007/01/07/0000209786.shtml)を見た瞬間思いついたネタがあったのですが、書きあぐねているうちにすっかり旬のネタではなくなってしまっていました。すこし勿体ないので、勿体ないお化けが出る前に晒して供養してやろうかと思います。
『バールの似合う新成人』
"バールのようなもの"という言葉がある。
ATMや金庫、あるいはドアやシャッターががこじ開けられた時や、殺人事件などの時に使われるあの言葉だ。聞くところに夜と、ある短編小説の題材にもなっているという、割と有名な言葉である。耳にしたことがない人がいたとしたら、割と珍しいのではないか。
しかし、バール自体は日常生活を送る中ではあまり目にする機会がないのではないだろうか。少なくとも、私の20年間という、取り立てて長い方ではないだろうがそれほど短いわけでもないであろう人生の中でお目にかかった事は、そう多く無いように思う。押し入れの奥や庭の物置の隅に放り込まれていることはあるかもしれないが、いつでも使える用に常備されている家はそう多くはないだろう。
ましてや、いつでも使えるように持ち歩いているなんていう奇特な人は、日本中、いや、世界中探してもそう多い方ではないに違いない。というか殆どいないはずだ。間違っても多数派ではない。少数派も少数派、マイノリティの道をまっしぐらだ。だいたい何に使うんだ。それこそ犯罪くらいしか思いつかない。
そしてここにそんなマイノリティが居る。
私だ。
私、長沼依凪の背負ったドラムバッグの中には、長さ1m程のバールが布袋に入れられてしまい込まれている。
塗料で塗られた色は原色の赤と青。実に派手派手しく、ずしりと重いその存在感はL字型をした鉄の塊そのものであり、正真正銘、どこからどう見てもバールである。いくらなんでも裸のままこんな物を持ち歩こうとは絶対に思わないだろう。道を歩いているだけで警官に職務質問されること請け合いだ。誓っても良い。実際私は一度職務質問された。
バッグの中に入れようとしても問題だらけだ。酷くかさばるから小さいバッグには入らない。しかもL字型の短い辺にもそれなりの長さがあるので、細長い袋、例えばバットケースのような物にも入らない。選択の余地はゴルフケースかドラムバッグくらいしかない。
さらに鉄製なのでかなり重い。重くて持ち運べない、などという重さではないが、これを肌身離さず一日持ち運び続けるとなると実際かなり骨が折れる。昔の少年漫画の修行か何かか、と言いたくもなってくる。
何より困るのは、こんな邪魔で邪魔でしょうがなくて基本的には単なる荷物でしかないこれを持ち歩かないわけにはいかないという事だ。頭痛のする頭を手で押さえ、私は溜め息を吐いた。
溜め息を吐く度に幸せが逃げていくというならば、私の幸せはこのバールを手にしたときから物凄いスピードで逃げていっているに違いない。時速360kmくらいで。きっと新幹線より速いのだろう。
コキコキと首の骨をならし、ずっと重いドラムバッグを背負っているせいで凝った肩を揉みほぐす。正直、年寄り臭いなぁと思いながら、私はまた溜め息を吐いた。
ここだけだと正直方向性が分からないと思うのですが、バール持った20歳大学生が退魔のバールをぶんぶん振り回して霊退治をする話でした。ジャンルは不条理系シュールギャグ。時間と何よりも才能不足で企画倒れに。まぁ、よくあること。